ひまわり〜あなただけをみつめている〜


いつの頃からだろう、気がつくとあいつを目で追っている自分がいる。
お日様のようにまぶしくきらきらとした笑顔で話をしている。
その笑顔を向けられた奴にオレは嫉妬という名の感情がわき上がってくるのを感じた。
そう思っていると、オレの視線を感じたのか羽村がオレのほうへ近づいてきた。
「あっ、先輩、珍しいですね。もしかしてサボり?」
くったくのない笑顔で話しかけてくる。
「んなんじゃねーよ。休みだ休み。国王にだって休みはあるんだぜ」
「先輩、そんなこと言って、東堂先生やレイヤードを困らせてるんじゃ…」
「はぁ、羽村、だ・か・ら、休みだって言ってっだろ。
それよりこれからお前は部活か?」
「そうですよ。先輩、よかったら見学していってください」
「あぁ、そうさせてもらうよ」

翔のきらきらした笑顔が竹刀を持つときりっと厳しい表情に変わっていく。
さすがに中学の時に全国制覇しただけの腕前。
他の部員は翔の相手にならない。
次々と倒されていく。
「次っ!」
「おー次はオレだ」
あれは確か青木直人、羽村の中学時代の親友って言ってたな。
「直人、久しぶりに、手合わせできるな。手加減なんてしないぜ」
羽村は嬉しそうに声をかける。
「当たり前だ、翔。オレだって手加減しないぜ、
手加減して何とかなる相手じゃないからな、お前は」

手加減なしの手合わせだったが、二人とも楽しそうにみえる。
いつまでたっても勝負がつかず、剣道部の主将が二人を止めに入った。
「青木、羽村。そのくらいにしておけ。
怪我でもしたら次の試合に響くからな。
お前たち二人には期待してるぞ」
「直人、腕を上げたよな。オレ嬉しいよ」
「翔、お前こそ、また腕を上げたよな。
オレたちがいれば全国も夢じゃないぜ」
青木が翔の肩を抱く、そんな何気ない仕草にオレはいらだちを覚えた。
青木がオレのほうをチラッと見たのが気に入らない。
あいつもきっと翔を狙ってる。

部活が終わってから
「なぁ、羽村。オレが使ってた部屋まだ空いてるか?
今日はこっちに泊まりたいんだが…」
「オレまだ一人だし、空いてますよ。
寮監の先生に聞いてみるよ」
オレが寮に泊まることに初めは渋い顔の寮監だったが、
一日だけということで許可してくれた。

翔はオレの気持ちを知ってか知らずか嬉しそうに話しかける。
「なんだか、前にもどったみたいだ。
先輩がウィンフィールドに行ってから、
オレずっと一人だったからちょっと寂しかったんだ。
先輩といろんな話したいなぁ」

*****

翔はオレがウィンフィールドに残ってから、起こったことをいろいろと話してくれた。
キラキラした瞳で嬉しそうに…気がつくともう就寝の時間…名残惜しそうに
「あっ、先輩。こんな時間!!もう遅いから寝ようよ。
明日もまだこっちにいられる?」
「そうだな、明日1日くらいならいられるぜ」
シオンとレイヤードの困惑した顔がふと浮かんだが翔と一緒にいられるなら今はそれが一番だから
「そっか、じゃあまだ一緒に話できるね」
嬉しそうに話す翔が愛しくて、オレは抱きしめたい衝動にかられる。
あと一歩が踏み出せずにいた。
もし翔に拒絶されたら…そんなことはないと思いつつも勇気がなかった。

就寝後

「…お父さま、お母さま…、うぁぁ…」
いつもの夢でまた飛び起きた。
「せんぱい!?大丈夫」
心配そうにのぞき込んでいる翔の顔が目に入った。
「しょう!?」
「やっぱり、まだうなされてるんだ」
泣きそうになっている翔の頬にそっと触れてみる。
「なんで、お前が泣くんだよ」
「…泣いてなんか……でもオ、オレ、すっごく心配だったんだ。
情念との戦いが終わった後、
先輩はあのままウィンフィールドに残るって…
オレはまだあの時の返事してなかったし…
それに先輩がまたうなされてたらどうしようって…」

泣いている翔の顔を見ていると、今まで押さえていた感情が吹き出してくる。
もう少しだけ先に進んでみようと、言葉を続けてみる。
「なぁ、翔。オレのこと好きか?」

「…わかんないよ…オレ…こんな気持ち…なったことないし…」
翔は少しとまどった様子で答えてくれた。
「オレはお前のこと好きだぜ。
オレは翔にキスしたい。
それ以上のこともしたいって思ってる」
「…せんぱい……」

「オレは翔、お前にオレだけを見ていて欲しいと思う」

「先輩、オレは…はじめて先輩にキスされた時、
全然イヤじゃなかった。
ドキドキして…でもあの時は直人のことがショックで
それ以外のことは考えられなかったんだ。
オレだけ幸せになんかなれないって…
最終決戦のあと先輩はそのままウィンフィールドに残ることになって、
本当はあの時泣きたいくらい寂しかった。
先輩が卒業するまではまたここで一緒に暮らせるって思ってたから…
先輩と離れてからずっと考えてたよ。
恋っていうものがどんな感じかわからなかったし…
先輩はオレのことひまわりみたいだって言ってくれたよね。
ひまわりが太陽に向かって咲くようにオレも先輩のことずっと見つめていたいよ。
それが好きってことなら、オレは先輩のこと好きだよ。大好きv」
はみかみながらそう話してくれる翔が愛しくて…
「翔、オレは翔が欲しい。いますぐ欲しい。本当はもっと早くそう言いたかった。
でもお前が青木のことで悩んでいるの知ってたから、我慢してたんだ。
だけどもう限界だから…お前の気持ちを知ったらもう止められない。
いいよな」
「せんぱい!?えっ!でも…」
翔の言葉は口づけで遮る
「なぁ、こういうときは先輩じゃなくて、来栖って呼べよ」
「だけど、急には無理だよ。せんぱ…い…」

その夜、俺たちは結ばれた。

翌朝、腕の中で眠る翔をみてこのうえない幸せを感じる。
ようやく手に入れたオレの最愛の人。
けっして手放したりしない。そう心に刻んで…

***********

食堂にあらわれない翔を心配して青木が翔の部屋にたずねてきた。
あんな可愛い翔の寝顔を見せるわけにはいかないから…オレは追い返すことに…
「翔は熱が出て、今日は休ませる。オレが翔の看病するから心配するな」

「翔が熱って、昨日はあんなに元気だったのに…
それに翔が熱だすなんて…おかしい。今までそんなこと一度もなかった」
オレの言葉を信じないで部屋に入ってこようとする青木を押しとどめて…
「青木、病人の前でうるさいぞ。とっとと学校へ行きな」
青木は渋々あきらめて翔の部屋から離れていった。

「ふぅ〜、やっと行ったか。ホントあいつはあきらめわるいぜ…」
眠っているであろう翔の傍に近づくと、オレと青木のやりとりの間に目を覚ましたらしく。
「…うう…ん…うん…せん…ぱい…」
翔はまだはっきりと覚醒していないうつろな瞳でオレを見ている。
「わりぃ、起こしちまったか?」

「ううん、大丈夫…でもどうして先輩がオレの部屋に!?」
「どうしてって、翔、身体は大丈夫か?」
「…えっ!?…身体って…痛っ、つっ…」
オレの言葉で起きあがろうとした翔は身体の痛みでそのままベッドに倒れ込んでしまう。
「ふぅ…やっぱり無理だな。歯止めが効かなかったから…ホントわりい」
といいつつも反省しているわけではないが…
初めて経験の翔にとってはおもいのほか負担が大きかったはずだ。
「………」
翔は昨夜の行為を思い出したのか真っ赤になってシーツに潜り込んでしまった。
オレはそんな翔をシーツごと抱きしめながら…
「翔、今日はオレがずっとついてるから何でもわがまま言っていいぞ。
まだしばらくは動けないだろうしな」

「先輩、何でも言っていいの?…オレ……」
翔は言いにくそうにして、次の言葉を言ってくれない。
そうこうしているうちに聞こえてきたのは、翔の腹の虫…
「翔、お前、もしかして腹へってんだ。それならそうと言えよ」
「だって、ホントは自分で食べに行きたいけど、動けないし…
でも国王である先輩に食事を取ってきてなんて言えないよ」

「翔、今のオレはウィンフィールドの国王じゃなくて、ただのお前の恋人だ。
だから遠慮するな」

「こ、恋人!?先輩がオレの…恋人」
「翔、じゃあ、お前は恋人でもないオレに抱かれたのか?」

「…せん…ぱい…だ、抱かれるって…」
口をぱくぱく開けて恥ずかしそうにする翔がどうしようもなく愛おしくて、
オレは翔をギュッと抱きしめる。

「なぁ、翔。まだ恋人としての実感がないなら、
お前がわかるまでずっとこうして抱きしめているから…
で、翔。食事は後からちゃんと持ってきてやるから…なっ!」
オレはそう言って翔にキスをしかける

「えっ!?先輩…もしかして…ちょっと待って、無理だよ…絶対無理…」

「しかたねえだろ。待てない。
そんな可愛い翔を見せつけられて何もしないっていうほうが無理だ。
それに『先輩』じゃなくて『来栖』だろ」

その日は翔はほとんどベッドから起きあがること出来なかった。
オレは今までになく充実した気持ちでいた。
幼い頃、無惨に殺された両親を見て、何をやってもダメなんだとあきらめて生きてきた。
そんなオレの考えを払拭してくれたのは、ひたむきで常に前を向いている翔の存在。
翔が傍にいてオレを見ていてくれれば、オレは強くなれる気がする。いや強くなりたい。
ひまわりが太陽に向かって咲くように、翔がいつまでもオレを見ていてくれるように力強く輝いていたいと思った。
腕の中の翔の寝顔にそう願った。



【有希さんのコメント】
来栖翔が同室だったらというお話の続編っぽいものです。来栖がニセものっぽくてすみません。
直人好きの方にも申し訳なく、でも直人翔も好きなので別のお話で直人を幸せにしたいと思います。 

「bluefantasy」様でサイトオープン記念でフリー配布されていたのを頂いてきました。
AFでは来栖×翔が一番好きなので、これがフリーになっていて、大喜びで攫った(笑)

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